今日の出来事などを

柵を渡る小さな冒険家

隣の畑との境にあった柵は、私にとって秘密の通路だった。手袋をはめた手でぎゅっと握り、慎重に、しかし誇らしげに進む。納屋の屋根に足をかける瞬間は、少し緊張した。けれど、登り切ったあとの達成感は格別だった。今の子供たちは、きっと「危ない」と言わ...
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屋根の上は、ぼくの秘密基地だった

朝、目を覚ますと、障子越しの光がやけに明るかった。外に出ると、世界が真っ白に塗り替えられている。あの瞬間の胸の高鳴りは、今思い出しても不思議なくらい鮮やかだ。昭和の冬。私がまだ小学生だったころ、雪はただの厄介者ではなかった。家は平屋建て。子...
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あの黒い自転車は、二人の祈りだった

自分の自転車を持っていない子もいた。彼らは大人用の大きな自転車にまたがり、三角乗りをしていた。片足をフレームの下から通し、体を傾けながら器用にペダルをこぐ。その姿が妙に格好よく見えた。私も黒い自転車に慣れてくると、負けじと挑戦した。「見てろ...
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三角乗りの放課後

「見てろよ。」そう言って私は、少し得意げに黒い自転車を押し出した。友だちが集まる空き地の端、土がむき出しになった場所が、私たちの練習場だった。三角乗りは簡単ではない。サドルにまたがらず、フレームの下から片足を通し、体を傾けながらペダルを踏む...
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補助輪を脱ぎ捨てた日

最初は補助輪付きだった。カラカラと音を立てながら走る黒い自転車。安定はしているが、どこか頼りない。友だちが片方の補助輪を外して、ふらつきながらも必死にこいでいる姿を見て、私は思った。「俺もやる。」片方を外した瞬間、世界が揺れた。体が左右に振...
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「わしらからだよ」という魔法

小学生のあの日、学校から帰ると家の前に黒い自転車が置いてあった。夕方の西日を受けて、黒い車体が鈍く光っていた。派手さはない。だが、どこか凛としていて、強そうで、男の子の私にはそれがたまらなく格好よく見えた。「わしらからだよ。」祖父の少し照れ...
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「泳げない」という名の、かけがえのない宝物

泳ぎは得意にはならなかった。けれど、あの夏の思い出は少しも色あせていない。夕方になると、川面はオレンジ色に染まり、セミの声が遠くで響いた。濡れたシャツのまま家に帰り、母に「また川に行ってたのかい」と笑われた。叱られても、心は満たされていた。...
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水底で見つけた、私だけの呼吸

泳げなくなった自分が、少し悔しかった。友だちは川面をすいすい進む。私は浅いところで、潜ってばかりいた。水の中にいるときだけ、安心できた。そこは静かで、誰にも押さえつけられない世界だった。光が揺れ、川底の石が優しく見守ってくれているようだった...