今日の出来事などを

何でもない一日が、心に残る理由

「今日」という言葉は、あのころの私にとって、ただの一日だった。朝起きて、学校に行って、帰ってきて、ごはんを食べて、眠る。それが「今日」だと思っていた。でも、今思い出す「今日」は、少しちがう。ランドセルを放り投げて、玄関で靴をそろえなかったこ...
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母の後ろ姿。そこには、私の知らない時間が流れていた。

台所で料理をしているお母さんの後ろ姿を、ぼくはぼーっと見ていた。フライパンからいいにおいがして、包丁のトントンという音が聞こえる。いつもと同じ光景なのに、なぜか今日は目が離せなかった。「あれ?」と思った。お母さんの背中が、前より少し小さく見...
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ギリギリとねじを巻く音が、静かな部屋に響きわたる。

家にあった時計は、電池で動くような便利なものではなかった。大きな木の箱に収まった、背の高い柱時計。そして、その時計を動かすためには、定期的に「ねじ」を回さなければならなかった。あの重たい金属のねじを、ゆっくり、ゆっくり回す。ギリギリギリギリ...
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「ただいま」と「お帰り」のあいだにある時間

玄関の引き戸を開けて、いつものように「ただいま」と声を出した。その声は、意識しなくても自然と出る。まるで呼吸のように、体に染み込んだ習慣だ。少し間をおいて、台所の方から母の声が返ってくる。「お帰り」たったそれだけのやり取りなのに、胸の奥のど...
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伸びゆく影を追いかけて、三人は家路を急いだ。

ラジオ体操が終わり、スタンプをもらって、三人で帰る道。朝日が少し高くなって、影が短くなっていく。妹が笑い、弟が転び、私は振り返って手を差し出す。空の色も、風の音も。すべてが「いつも通り」で、愛おしかった。その一瞬一瞬が、何でもない日常だった...
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夕闇に溶けていく、町を支える背中

まだ朝の光が低い時間、役員のおじさんは重い椅子を黙々と運んでいた。額には、すでに大粒の汗が光っている。テントを立て、机を整え、冷えた麦茶を用意するその一連の動作に、迷いはない。誰かのために、ただ黙って動く。その背中に宿る『静かな強さ』を、私...
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セピア色の記憶:駄菓子の匂いと、忘れがちな勇気について

町内会の集まりの帰り道、私たち三人は必ず駄菓子屋に寄った。ガラス戸を引くと、カランと鈴が鳴る。甘い匂いと少し古い木の匂いが混ざって、あの店だけ時間が止まっているようだった。私はいつも、何を買うか決めきれずに棚の前で固まる。10円、20円、3...
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一日の始まりは、軽やかなスタンプの音とともに。

町内会では、季節ごとに子どもが楽しめる催し物があった。大人になって気づく。あの何気ないラジオ体操の朝が、一番の贅沢だったことに。夏休みの朝、ラジオ体操。まだ空気が少しひんやりしていて、朝露が草の先に残っている時間帯。妹と弟と三人で、遅刻しな...