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小さな父ちゃん、台所に立つ ― 昭和のカレー戦争

小さな父ちゃん、台所に立つ ― 昭和のカレー戦争
昭和の小学生だった私は、長男というだけで少しだけ大人の役目を背負っていた。
両親は共働き。妹と弟の三人で、家に取り残される午後は決して珍しくなかった。

今思えば、まだランドセルが似合う年頃の私に、家事という言葉は重すぎたかもしれない。
それでも、あの頃の私は不思議と「やらなきゃ」という使命感に燃えていた。

床の拭き掃除を始めたのは、母の口癖がきっかけだった。
「床が光っていると、気持ちも明るくなるのよ」

その言葉を思い出しながら、雑巾をぎゅっと絞る。
冷たい水に手を入れると、心まで引き締まった。

そして夕方。私は台所に立つ。

母のカレーが大好きだった。
あの匂い、あの湯気、あの甘くて少しだけ辛い味。どうしても再現したかった。

じゃがいもは大きく切る。ゴロゴロと。
それが我が家流だ。

当時は、缶に入った粉末のカレーや、最中の皮の中にカレールーが入ったものもあった。
あの最中をパキッと割る感触が好きだった。

中から粉が出てきて、鍋に入れると、湯気の中にカレーの匂いが広がる。

焦がさないように、火加減を見つめる。
妹が「まだ?」と聞く。弟は鍋をのぞき込む。

私は胸を張って言った。「もうすぐだ。」
あの瞬間、私は確かに“家長”だった。小さな父ちゃんだった。

明るい気持ちになる言葉
踏み出した瞬間、不可能が可能性に変わる。

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