
朝、ふと目を開けた瞬間に「いつもとちがう」と思った。
部屋の中がほんのり白くて、空気まで光っているみたいだった。
それに、音がない。
近所の車のエンジン音も、遠くの工場の機械の音も聞こえない。
耳が変になったのかと思うくらい、シーンとしている。
布団から抜け出して窓に近づく。
カーテンを少しだけめくると、景色が全部白くなっていた。
やっぱり雪だ。
外へ出てみると、自分の歩く音だけがはっきりする。
雪を踏むと、やわらかいのにちゃんと返事をするみたいに音が鳴る。
それがおもしろくて、何度も同じ場所を踏んでみた。
なんでこんなにうれしいのかは、自分でもわからない。
ただ、町全体が静かになると、心まできれいになる気がした。
四年生のぼくは、その朝の空気が好きだった。
誰もいない世界を、最初に歩いているような気分になれたからだ。
説明はできないけれど、
胸の奥がすうっと広がる感じだけは、はっきり覚えている。
明るい気持ちになる言葉:
何も聞こえないひとときが、明日の自分を強く、優しく育んでくれる。

