
朝、目を覚まして障子越しに感じた空気が、いつもよりひんやりとしていた。
カーテンを開けると、夜のうちに降った雪が道路を薄く覆い、白い線のように街を縁取っていた。
音の少ない朝だった。
車の走る音も控えめで、世界全体が少し息をひそめているように感じられた。
八時ごろになると、小雨が降り始め、積もった雪はゆっくりと輪郭を失っていった。
気温は一桁。今日は一日、冷え込みが続くらしい。
こんな朝に立つと、昭和の冬の記憶が自然と胸に浮かんでくる。
まだ子どもだった頃、玄関を開けると土の匂いと冷たい空気が一緒に入り込み、母が「足元、滑るよ」と声をかけてくれた。
今のように舗装された道ではなく、ところどころに残る土と水たまり。
雪は珍しく、降るとそれだけで特別な一日になった。
今年一年を振り返ると、決して楽なことばかりではなかった。
それでも、こうして季節の変化を感じ取れる心を失わずにいられたことは、ひとつの救いだったと思う。
体調の波、気持ちの揺れ、不安な夜もあったが、朝は必ずやってきた。
その当たり前を、昭和の記憶は静かに教えてくれる。
白くなった道路が雨に溶けていく様子を見ながら、今日もまた一歩、無理のない歩幅で進めばいいのだと自分に言い聞かせた。
明るい気持ちになる言葉:
静かな朝ほど、心は遠くまで歩いていける。

