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給食の時間に広がった小さな幸せ

給食の時間に広がった小さな幸せ
四時間目の終わりが近づくころ、授業よりも気になっていたのは給食の支度の気配だった。
廊下の向こうが少しざわつき始めると、教室の空気まで落ち着かなくなる。

金属の食缶が触れ合う音や、当番の足音が近づいてくるだけで、胸がそわそわと弾んだ。

この日の献立は、コッペパンと脱脂粉乳、そして鯨の竜田揚げ。
今思えば個性的な組み合わせだけれど、あの頃の私たちにとっては立派なごちそうだった。

脱脂粉乳は、独特の匂いがして、正直ちょっと苦手な子も多かった。
それでも「全部飲まないと大きくなれないぞ」なんて言われながら、みんな顔をしかめつつ頑張って飲んでいた。

鯨の竜田揚げは、甘辛い味つけで、ごはんが欲しくなるようなおかずだった。

衣が少し固くても、「今日は当たりだな」なんて言い合いながら、教室はにぎやかな笑い声でいっぱいになる。

コッペパンにかじりつきながら、友だちの牛乳ひげならぬ“粉乳ひげ”を見つけては大笑い。
そんなたわいないやりとりが、給食の時間を何より楽しいものにしていた。

家では決して裕福とは言えなかったけれど、給食の時間だけは、みんな同じものを食べ、同じ時間を過ごしていた。

好き嫌いも、量の多い少ないも、全部ひっくるめて「一緒」が当たり前だった。

豪華さとは違う、温かさ。
誰かと向かい合って食べるだけで、心まで満たされるあの感覚を、子どもの頃の私は何も考えずに受け取っていたのだと思う。

教室のざわめきと、コッペパンの匂い、そして少し苦い脱脂粉乳の味は、今でも思い出すたび、胸の奥にやさしい灯りをともしてくれる。

明るい気持ちになる言葉
楽しみは、いつもすぐそばにある

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