
ブリキの缶は、もうどこにもない。
捨てた記憶すら、残っていない。
気づいたら、なくなっていた。
それでも、形は覚えている。
少しくすんだ色、丸い縁、蓋を開けるときの、あの音。
あの缶は、特別なものではなかった。
でも、確かにそこにあった。変わらず、同じ場所に。
それだけで、十分だったのだと思う。
安心とは、きっとそういうものだ。
今の私は、あの頃より多くを考え、多くを選びながら生きている。
だからこそ、ときどき、何も考えずにいられた時間を思い出す。
ブリキの缶の中にあった甘さは、今も心の奥で、静かに残っている。
思い出すたびに、少しだけ、やさしい気持ちになれる。
明るい気持ちになる言葉:
「過去は、消えずに静かに眠っている」
