
肝油ドロップを思い出すと、必ず夕方の光が一緒に浮かぶ。
窓の外が少しずつ暗くなり始めて、家の中だけがまだ明るい、あの時間。
ブリキ製の缶は、指に取るとひんやりしていて、
子どもの手には少しだけ重かった。
蓋を開けるときの、金属同士が触れる小さな音。
あの音が鳴ると、「今日が終わる」という気持ちになった。
中に並んでいる肝油ドロップは、白くて、丸くて、静かだった。
お菓子のように騒がしくもなく、特別に嬉しいわけでもないのに、なぜか大切だった。
一粒だけ、という決まりは当たり前のように守られていて、
そのことに疑問を持つ余裕もなかった。
ただ、そういうものだと思っていた。
舌の上でゆっくり溶けていく甘さを感じながら、
私は何も考えていなかった。
それができた時間は、今思うと、とても贅沢だった。
明るい気持ちになる言葉:
「あの頃の時間は、今より少しだけゆっくりだった」

