
子どものころの冬は、今よりずっと厳しかった気がする。
吐く息は白く、廊下は足が痛くなるほど冷えていた。
それでも、不思議と心細さはなかった。
雪が降ると、町は急におとなしくなる。
遠くの音まで吸いこまれて、自分の足音だけが残る。
家に戻れば、居間のまん中に赤い光があった。
石炭ストーブの火だ。
ゆっくりと燃えるその色を見ていると、
外の寒さは別の世界の出来事のように思えた。
ストーブの上では、いつもやかんが温められていた。
ふたのすき間から立ちのぼる湯気は、まるで家の呼吸みたいだった。
湯のみを両手で包みこむと、じんわりと指先がゆるむ。
その感覚だけで、十分だった。
小学四年生のぼくは、難しいことなんて考えていない。
ただ、雪の日の静けさと、燃える火の色と、
湯気のゆらぎが好きだった。
今振り返ると、それがぼくの冬の原点だと思う。
白い景色の中に、確かな赤があった。
雪は毎年とけて消えていく。
けれど、あの火のぬくもりは消えない。
胸の奥に、小さなストーブがあるみたいに、
今も静かにあたため続けてくれている。
明るい気持ちになる言葉:
思い出のぬくもりは、時間がたっても冷めない。
