
学校の帰り道は、朝よりもまぶしかった。
踏み固められた雪が光って、目を細めないと前が見えない。
手袋の中の指は冷えきっているし、耳もひりひりする。
息を吐くたび、白い煙みたいになる。
でもぼくは、早く帰りたかった。
頭の中には、あの赤い色が浮かんでいたからだ。
玄関の戸を引くと、外とはまったくちがう空気が流れてくる。
少し重たい石炭の匂いと、やわらかいあたたかさ。
居間ではストーブが静かに燃えている。
その上では、やかんが静かに湯気を立てている。
何も変わっていないその景色を見ただけで、肩の力が抜ける。
ぼくはランドセルを置くと、火の前に座りこんだ。
ゆらゆら揺れる赤い色を見ていると、さっきまでの寒さが遠くなる。
外の雪は音を吸いこんでしまうけれど、
この部屋には、石炭がはぜる小さな音がある。
四年生のぼくは思っていた。冬はつらいだけの季節じゃない。
外がどんなに冷えても、帰るとあたたかい場所がある。
それだけで、なんだか自分は大丈夫だと思えた。
明るい気持ちになる言葉:
帰る場所があるだけで、人はちゃんと前を向ける。

