
朝の冷え込みで目が覚めた。
布団の中に残る体温と、部屋の冷たい空気の境目がはっきりしていて、冬の朝だと身体が先に理解する。床に足を下ろした瞬間の冷たさに、思わず肩をすくめた。
昔も、こんな朝があった。ストーブをつける前の家の中は、今よりずっと寒かった気がする。
着替えをしながら、ふと母の背中を思い出す。
朝早く起きて、まだ暗い台所で音を立てないように動いていた姿。
家族を起こさないようにしながら、朝の支度を整えていた。
自分は布団の中で、その気配を感じながら、もう少しだけ眠ろうとしていた。
あの頃の安心感は、説明できないほど大きかった。
朝食は、今はパンとコーヒーだ。
ブラックのインスタントコーヒーを飲むようになったのも、いつからだったのかわからない。
子どもの頃、家の朝にあったのは、必ず番茶だった。
急須から注がれるお茶の音と、湯気に混じる香り。
父は黙って湯呑みを手に取り、母は一言二言、今日の予定を口にしていた。
茶柱が立つと、母は少し笑って「いいことあるかもね」と言った。
その言葉を、心から信じていた自分がいた。
あの朝の風景は、もう戻らないけれど、今の自分の中に、確かに息づいている。
寒い朝にコーヒーを飲みながら、ふと胸が温かくなったのは、そのせいかもしれない。
明るい気持ちになる言葉:
思い出は、今もそっと寄り添っている
