
この牛革のランドセルは、もう誰かが学校へ背負っていくことはない。
それでも手放せないのは、その質素な中身にこそ、時代の豊かさがあったと気づかせてくれる。
教科書と筆入れだけ。けれどその二つには、学ぶことへの真剣さと、家族の支えが詰まっていた。余計な物がないからこそ、毎日の準備も気持ちも整っていたのだろう。
昭和の暮らしは不便だったが、心の置きどころは今よりずっとはっきりしていたのかもしれない。牛革の擦れた跡は、父が真面目に学校へ通い続けた証。
その背中を支えていたのは、祖父母と両親の静かな愛情だった。
私はランドセルを抱えながら思う。
たくさん持つことより、大切なものを丁寧に持ち続けることのほうが、きっと豊かだ。
黒い牛革は、今日も静かに光りながら、そんなことを語りかけている気がする。
明るい気持ちになる言葉:
想いは、未来へ続く

