
朝の気温は五度ほど。
空は澄みきっていて、雲ひとつない青空が広がっていたが、外に出るとやはり身が引き締まるような寒さだった。
吐く息が白く、足元の土も夜の冷えをまだ手放していない。
そんな朝の空気の中で、子供時代家の中では薪ストーブから石炭を使ったストーブへと切り替える作業が進められていた。
薪ストーブの炎はやさしく、どこか情緒がある。
一方で、石炭のストーブは力強く、じわじわと部屋全体を温めてくれる。
燃料を変えるという、ただそれだけのことなのに、季節が本格的に冬へと腰を据えたことを、はっきりと感じさせる瞬間だった。
幼い頃、大人たちが薪を切る仕事をしているのを、寒さも忘れてじっと眺めていた記憶がある。
木が割れる乾いた音、斧を振り下ろすたびに舞う木くず、仕事の合間に立ちのぼる白い息。
そのすべてが面白くて、時間を忘れて見入っていた。
働く背中は、子どもの目にはとても大きく、頼もしく映っていた。
石炭ストーブに火が入ると、独特の匂いとともに、家の中にゆっくりと温もりが広がっていく。
昭和四十年代の冬、そのものの空気だ。
ストーブの上ではやかんがかけられ、やがて「ぐつぐつ」と小さな音を立て始める。
その音を聞いていると、不思議と心が落ち着き、寒さの厳しささえも、懐かしく思えてくる。
朝の静かな時間の中、石炭の匂いとともに蘇る記憶は、今の自分の心をやさしく包み込む。
明るい気持ちになる言葉:
「懐かしい記憶は、今の心をそっと温めてくれる」

