
豆餅は特別だった。
ゴロゴロと入った豆の塩気がたまらなく好きで、焼けるのを待つ時間がもどかしかった。
兄妹で数を数えながら、「どれが一番大きいか」と目を光らせる。
少しでも大きいものを取りたい。
そんな小さな欲張りが、冬の台所をにぎやかにしていた。
どうしてあんなに真剣だったのだろう。
今なら笑って譲れるのに、あの頃は一つの餅が世界のすべてだった。
きっと、数が限られていたからこそ価値があったのだ。
限られているから、真剣になる。限られているから、味わい深い。
焼きあがった豆餅を素早く取り皿へ。
少し焦げ目が強いものを避け、きれいに焼けたものを狙う。
醤油をつけすぎるとしょっぱい。
だから、端だけにちょんとつけるのがコツだった。
豆の塩味と醤油の香りが混ざる瞬間、口いっぱいに広がる幸福感。
「それ、大きいほうじゃない?」
「違うよ、こっちのほうが大きいって!」
「けんかしないの。半分こにすればいいでしょう」
母の一言で、渋々半分に割る。
割れた断面から湯気が立ちのぼり、自然と笑いがこぼれた。
あの小さな攻防戦は、家族のぬくもりそのものだった。
明るい気持ちになる言葉:
笑い合えるけんかは、宝物。
