
母のカレーは、特別だった。
特別な材料が入っていたわけではない。
でも、どうしても同じ味にならない。
じゃがいもは大きく切る。
玉ねぎは透き通るまで炒める。肉は焦がさない。
母の背中を思い出しながら、私は鍋を見つめる。
最中の中に入ったカレールーを割るとき、私は少し誇らしかった。
「俺、分かってるからな。」そんな気持ちだった。
けれど、母の味には届かない。
なぜだろうと考えた。
火加減か。水の量か。それとも、母の“気持ち”か。
今なら分かる。
あの味は、忙しい中でも家族を思う気持ちの味だったのだと。
それでも私はあきらめなかった。
真似をして、失敗して、また作る。
そのうち、妹が言った。
「お兄ちゃんのカレーも好きだよ。」胸が熱くなった。
母の味にはなれなくても、私の味になっていったのだ。
明るい気持ちになる言葉:
真似るたび、自分らしさが磨かれていく。

