
夕方の家は、どこか寂しかった。時計の音がやけに大きく響く。
妹は窓の外を見ていた。弟は畳に寝転び、天井の木目を数えている。
両親が帰るまでの時間は、私たちにとって少しだけ長い試練だった。
「今日は何して待つ?」
私がそう言うと、妹がぱっと振り向いた。
三人で作戦会議をするのが日課だった。
宿題を先に終わらせる日。
こっそりお菓子を分ける日。
大掃除をして母を驚かせる日。
あの頃の私は、“兄”であることに必死だった。
でも本当は、私だって甘えたかった。
寂しいのは、きっと私も同じだった。
それでも、二人の前では強くいたかった。
夕暮れの赤い光が部屋を染める。
台所からはカレーの匂い。
私は鍋をかき混ぜながら、心の中でつぶやいた。
「母さん、早く帰ってこないかな。」
その気持ちは言葉にしなかった。
言ってしまえば、強い兄でいられなくなる気がしたから。
でも、三人でいると不思議と笑えた。
支え合っていたのは、きっと私だけじゃない。
妹も弟も、無意識に私を支えてくれていた。
明るい気持ちになる言葉:
手を取り合えば、寂しさは小さくなり、ぬくもりは倍になる。

