
昭和の冬の朝は、母の小さな音から始まった。
まだ布団の中で丸くなっていると、台所のほうからカチャカチャと金具の触れ合う音がする。
石炭ストーブに火を入れる準備の音だ。
母は慣れた手つきで新聞紙を丸め、薪を少し置き、その上に石炭をのせる。
そして静かに火をつける。
やがて、パチパチという音がゴォッという力強い燃焼音に変わる。
あの音を聞くと、「今日も一日が始まる」と感じたものだ。
私は布団から出ると、真っ先にストーブの前に座る。
赤くなった鉄の胴体が、じんわりと体をあたためてくれる。
母は何も言わない。ただ湯気の立つやかんを見ながら、味噌汁の支度をしている。
今思えば、あの火は単なる暖房ではなかった。
母が家族のために灯す、小さな太陽だったのだ。
寒い朝も、母の背中を見ていると不思議と安心した。
ぬくもりは、いつも母の手から生まれていた。
明るい気持ちになる言葉:
一日のぬくもりは、やさしい手から生まれる。

