
冬の夜、我が家の中心にあったのはこたつではなく、丸い石炭ストーブだった。
ごとごとと小さな音を立てながら赤く燃える火は、部屋だけでなく、家族の心まで温めてくれていたように思う。
父が専用のスコップで石炭をくべると、ふわりと独特の匂いが広がる。
その匂いは少し煙たくて、でもどこか安心する匂いだった。
母はストーブの上にやかんをのせ、湯気が細く立ちのぼるのを見ながら夕飯の支度をしている。
しゅんしゅんという音が、静かな夜の音楽のように部屋に満ちていた。
私はストーブの前に座り込み、手をかざし温まりながら、ぼんやり火を見つめるのが大好き。
赤い炭の奥に青い炎が揺れる様子は、子ども心に不思議で、いつまでも見ていられた。
時々、するめや餅を網にのせて焼いてくれたこともある。
焦げる匂いに家族みんなが顔を上げ、「もういいんじゃないか」と笑い合った。
テレビはまだ白黒で、映りが悪くなると父が横を軽く叩いて直していた。
そのたびに画面がゆらりと揺れ、家族みんなで声を立てて笑う。
特別な出来事があったわけではない、あの夜の空気は、思い出すと胸の奥を柔らかくする。
寒い外から帰ってきて、あのストーブの前に座った瞬間の安心感。
あれは「暖かい」だけではなく、「ここが自分の居場所だ」というぬくもりだったのだと思う。
石炭の火はもう生活の中から消えてしまったけれど、
あの赤い光は、今も私の記憶の中で静かに燃え続けている。
明るい気持ちになる言葉:
ぬくもりは、人の心をやさしく結ぶ

