
夕暮れが早い季節になると、学校帰りの空はすでに薄紫色に染まっていました。
電柱の影が長く伸び、足元の砂利道がかすかに光って見えたものです。
その道を歩いていると、どこからともなく漂ってくるのが、焼き魚の煙でした。
七輪の炭がはぜる音、脂が落ちて立ちのぼる煙の匂い。
それはお腹を空かせた子どもにとって、何よりの誘惑でした。
私は思わず深呼吸をして、その匂いを胸いっぱいに吸い込んでいたのを覚えています。
匂いを吸い込むたびに、「早く帰ろう」という気持ちと、「もう少し遊んでいたい」という気持ちが胸の中で揺れました。
ある日、道端の塀の上に一匹の猫が座っていました。
鼻をひくひくさせ、煙の流れてくる方をじっと見つめています。
その姿がなんとも真剣で、私は思わず立ち止まり、「お前も腹ぺこか」と小声で話しかけました。猫は振り向きもせず、たださんまの焼ける方向だけを見つめていました。
人も猫も、同じ匂いに引き寄せられていたあの時間。
貧しい時代だったが、匂い一つで心が躍り、夕ごはんを心から楽しみにできた日々でした。
今は便利になりましたが、あの頃のように匂いで季節を感じることは少なくなった気がします。
それでも、記憶の中のあの煙は、今もはっきりと立ちのぼっています。
明るい気持ちになる言葉:
「懐かしさは、心をやさしく照らす灯り」
