
ストーブがやっと暖かくなってくると、家の中の空気が変わる。
さっきまで冷たかった指先が、じんわりしてくる。
その変化が、子どもにははっきり分かった。
いちばん暖かいのは、ストーブのすぐ前だ。
だから、自然とそこに座りたくなる。
でも、そこは父の場所だったり、母の場所だったり、「ちょっとずれて」と言われることもある。
それでも、少し横にずれるだけで、暖かさはちゃんと届いた。
ストーブの上には、いつもやかんが乗っている。
湯気が出ると、空気がやわらかくなる気がした。
やかんのふたがカタカタ鳴る音は、冬の家の音だった。
外は寒くて静かなのに、家の中には音があって、生きている感じがした。
北海道の冬は、外で遊ぶ時間が短い。
雪は楽しいけれど、すぐに手が痛くなる。
だから、家の中で過ごす時間が長くなる。
ストーブの前で宿題をしたり、家族の話を聞いたりする時間が、冬の一日の大半だった。
大人たちは、寒さの話ばかりしていたけれど、子どもの私は、ストーブの前があれば、
それで十分だった。
暖かい場所があることが、何よりの安心だった。
明るい気持ちになる言葉:
あたたかさは、順番にまわってくる

