
泳ぎは得意にはならなかった。
けれど、あの夏の思い出は少しも色あせていない。
夕方になると、川面はオレンジ色に染まり、セミの声が遠くで響いた。
濡れたシャツのまま家に帰り、母に「また川に行ってたのかい」と笑われた。
叱られても、心は満たされていた。
あの経験があったからこそ、人の心の痛みに敏感になれた気がする。
誰かが怖い思いをしていないか、自然と気づくようになった。
沈められたあの日も、
石を積んだあの汗も、
潜って見上げた光も、
すべてが今の私を作っている。
北海道の短い夏。あの川は、今も変わらず流れているのだろうか。
もしもう一度立つことができたら、きっと私はこうつぶやくだろう。
「ありがとう。あの頃の私。」
人生は、泳ぎが上手でなくてもいい。
時には潜り、静かに呼吸を整えながら進めばいい。
そう思える今、あの夏はやはり、かけがえのない宝物なのだ。
明るい気持ちになる言葉:
過去は、今を愛するための贈り物。
