
学校へ着くころには、耳の感覚はすっかりなくなっていた。
それでも教室の石炭ストーブの匂いを嗅ぐと、ほっと身体がゆるむ。
鉄の円筒の上では、給食当番がやかんを置き、湯気が立っていた。
あの少し焦げたような石炭の匂いは、冬の学校そのものだった。
休み時間になると、外が晴れていれば迷わず校庭へ出た。
長靴のまま雪を踏み固めて、自然にできた円の中でドッジボールが始まる。
ボールは冷たく、当たると痛い。それでも誰もやめようとは言わない。
走り回っているうちに、手足の先まで熱が戻ってくるからだ。
「いくぞー!」という声、「セーフ!」と叫ぶ声、転んで笑う声。
吐く息は白くても、みんなの顔は赤くて、生き生きしていた。
寒さに負けないどころか、寒さを笑い飛ばしていたように思う。
教室へ戻ると、ストーブの周りに自然と人が集まり、濡れた手袋を乾かしながら他愛ない話で盛り上がる。
貧しくても、遊び道具が少なくても、あの頃の毎日は確かに豊かだった。
笑い声が、心の奥まで温めてくれていたからだ。
明るい気持ちになる言葉:
笑い声は、いちばんの暖房だ

