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霧雨の朝、交わす一言の重み

霧雨の朝、交わす一言の重み
霧雨の朝だった。
寒さは思ったほどではなく、静かな湿り気を含んだ空気が部屋に満ちている。

目を覚ますと、妻もすでに起きていて、台所から小さな物音が聞こえてきた。

「今日はそんなに寒くないね」
そう声をかけると、妻は振り返り、
「霧雨だからかな。体は大丈夫?」
と、いつも通りの、けれど決して軽くない言葉を返してくれた。

下半身が突然動かなくなり、救急車で運ばれてから一年。
あの頃は、こんな何気ない朝の会話すら、もう戻らないものだと思っていた。

病院のベッドで、天井を見つめながら過ごしていた時間を思い出すと、今のこの朝が奇跡のように感じられる。

「もう一年だね」
私がそう言うと、妻は少し間を置いて、
「本当に、よくここまで来たね」
と、静かに言った。その声には、喜びと同時に、これまで飲み込んできた不安や緊張が滲んでいるように感じた。

手術、長い入院生活、リハビリ病院での日々。
思うように動かない体に苛立ち、落ち込む私を、妻は決して急かさず、隣で見守ってくれていた。

今、湯気の立つお茶を差し出しながら、
「無理しないでね」
と言ってくれるその一言に、これまでのすべてが詰まっているように思えた。

明るい気持ちになる言葉
「言葉を交わせる朝が、何よりの支えになる」

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