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ガラガラ戸の記憶

ガラガラ戸の記憶
配達を終えた帰り道、もう一度あの駄菓子屋の前を通った。
朝日は昇っていたが、まだ開店前。

木枠のガラス戸はぴたりと閉じられ、店の中は薄暗いままだった。

あの戸を開けるときの「ガラガラ」という音が、私は好きだった。
子どもながらに「お店に入る」という特別な気持ちがして、少し背筋が伸びたものだ。

戸を開けた瞬間に混じる、甘いお菓子の匂いと、少し古い木の匂い。
その空気を吸い込むだけで、胸がいっぱいになった。

あの場所では、誰も急かさなかった。
どれにするか、いくらまで使えるか、自分で考える時間が許されていた。

今思えば、あのゆっくりした時間がどれほどぜいたくだったことか。

閉じられたガラス戸を見つめながら、私は心の中でそっとあの音を鳴らしてみた。

ガラガラ、と。懐かしい音が、胸の奥でやさしく響いた。

明るい気持ちになる言葉
小さな音の思い出が、大きな思い出になる

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