
台所から甘いタレの匂いがしてくると、胸がぱっと明るくなる。
その匂いは、ぼくにとって特別な合図だった。
「今日はジンギスカンだ。」
そう気づいた瞬間、学校の疲れなんてどこかへ飛んでいく。
胸の中がワクワクでいっぱいになる。
ジンギスカンの日は、家の中の空気が少し違う。
父が棚からあの丸い鉄鍋を出してくると、妹も弟も台所をのぞき込む。
「今日はいっぱい食べるぞ」
そんな気持ちになる。
鍋の真ん中の山のところで肉を焼いて、
周りにもやしや薄く切ったにんじんを置く。
それだけなのに、なぜかすごく楽しい。
きっと、兄妹みんなで食べるからだと思う。
母は皿いっぱいにもやしを盛り、
その上ににんじんを少し並べる。
父はジンギスカン鍋を火にかける。
鍋が熱くなると、タレにつけてある肉を乗せる。
すると
「ジュワーーーッ」
いい音がした。
その音を聞いた妹が言った。
「わぁ、おいしそう!」
弟はもう箸を持って待っている。
父が笑いながら言う。
「まだ焼けてないぞ」
妹が言う。
「お兄ちゃん、早く食べたいね」
ぼくも笑いながら答える。
「うん、今日はいっぱい食べるぞ」
ジンギスカンの日は、家族の笑い声がいつもより多かった。
明るい気持ちになる言葉:
家族と囲むご飯は、それだけで心が満たされる。

