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第一番札所へ向かう道の、あの日の鼓動

第一番札所へ向かう道の、あの日の鼓動
南風の音を聞いていると、不思議と四国で迎えた最初の朝のことが脳裏に浮かんだ。
徳島空港に降り立った時、まとわりつくような夏の熱気に一瞬たじろいだが、それ以上に胸の奥が熱くなっていた。

これから始まる道への期待と不安が、入り混じっていたのだと思う。

空港からバスに揺られ、霊山寺へ向かう車窓を眺めながら、何度も深呼吸をした。
自分は本当に歩き切れるのだろうか。
途中で投げ出してしまうのではないか。そんな弱気な思いが顔を出すたびに、「ここまで来たじゃないか」と自分に言い聞かせた。

霊山寺に着き、お遍路の道具を揃える場面も忘れられない。

白衣、金剛杖、納経帳。どれも初めて手にするものばかりで、店の人に一つひとつ説明を受けながら、まるで新しい人生の装備を整えているような気分だった。

杖を握った時の木の感触が、妙に心強かったことを覚えている。

第一番札所の境内に足を踏み入れた瞬間、背筋が自然と伸びた。
ここがすべての始まりなのだと思うと、胸が詰まるような感覚があった。

誰かに強制されたわけでも、見栄で始めたわけでもない。ただ、自分自身が納得するために選んだ道。その重みが、静かに肩に乗ってきた。

今日、仏壇の前で般若心経を唱えながら、あの日の自分に心の中で語りかけた。
「よく歩き出したな」と。結果がどうであれ、あの一歩があったからこそ、今の自分がある。

そう思えるようになったこと自体が、年月を重ねた証なのだろう。

明るい気持ちになる言葉
踏み出した一歩は、今も心の中で歩き続けている。

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