
「昨日より少なくないか?」ヒロシが眉をひそめた。
「文句言うなよ。昨日はたまたまだ。」ぼくは負けじと返す。
ケンイチが手のひらを開いた。そこには、緑色の渦が入ったビー玉が一つ。
「これ見ろよ。光に当てると、金色に見えるぞ。」
ぼくたちは三人で顔を寄せ合い、ビー玉をのぞき込む。
「ほんとだ…。」
「なんか宇宙みたいだな。」
「宇宙?」とヒロシが笑う。
「お前、宇宙見たことあるのかよ。」
「ないけど、テレビで見た。」
「それだけかよ!」
また三人で笑い転げる。
その日、突然工場の扉がガラリと開いた。
「おい、何してる!」
低い声が響いた瞬間、心臓が止まりそうになった。
「やばい!」
「走れ!」
ぼくたちは一斉に駆け出した。砂利道を蹴り上げ、息を切らしながら角を曲がる。
やっと立ち止まったとき、三人とも大笑いしていた。
「捕まるかと思ったな。」
「でも、逃げ切った。」
「ビー玉、落としてないか?」
ぼくはポケットを確認した。
「大丈夫、ちゃんとある。」
あのときの鼓動の速さ。怖さと楽しさが混ざった感覚。
子どもの頃しか味わえない、純粋な高鳴りだった。
今の私は、あんなふうに全力で走ることがあるだろうか。
心臓が壊れそうなほど笑うことがあるだろうか。
ビー玉一つで、大騒ぎできたあの頃。
あれは確かに、かけがえのない時間だった。
明るい気持ちになる言葉:
いっしょに笑えば、それだけで今日は最高の一日になる。
