
「なあ、今日どうする?」
放課後、校門を出たところで、いつものようにケンイチが小声で言った。
ぼくはランドセルを背負い直しながら、少しだけ間を置いてから答える。
「行くに決まってるだろ。昨日の雨で、流れてるかもしれないぞ。」
すると、後ろからヒロシが駆け寄ってきた。
「おいおい、大声出すなよ。工場の人に聞こえたらどうするんだ。」
ぼくたちは顔を見合わせて、声を押し殺して笑った。
大勢で行けばすぐに目立つ。だから、いつもこの三人だけ。
暗黙の了解だった。秘密を守れるのは、このメンバーだけだと信じていた。
ラムネ工場の裏道に回ると、甘くて少し焦げた砂糖の匂いが漂っていた。
鉄の柵の向こうから、瓶が触れ合う音がかすかに聞こえる。
「この匂い、たまんないな。」ケンイチが鼻をひくつかせる。
「匂いかいでる場合じゃない。探せ、探せ。」ヒロシが地面を指差す。
三人でしゃがみ込み、砂利の間をじっと見つめる。
陽の光が反射する小さな丸い影を見つけるたび、胸が跳ねる。
「あった!」
ぼくが声を上げると、二人が一斉に振り向く。
「どこどこ?」
「うわ、きれいだな。青の渦、入ってるじゃん。」
拾い上げたビー玉は、冷たくて、ずっしりとしていた。
たったこれだけのものなのに、まるで金貨を掘り当てたような気分になる。
「今日は俺の勝ちだな。」
「何が勝ちだよ。数で決めるのか?」
「いや、きれいさだろ。」
そんなくだらないやり取りが、どうしようもなく楽しかった。
今思えば、あの時間はビー玉を拾っていたのではない。
友情のかけらを拾っていたのだ。
三人で交わした「また明日な」という約束が、何よりも輝いていた。
明るい気持ちになる言葉:
同じ秘密を抱えている。それだけで、心はこんなにも強くなれる。
