
今朝、外に出たとき、ふと脳裏に浮かんだのは、あの赤い郵便ポストの姿だった。
昭和の町角には、どこへ行っても当たり前のように立っていた丸みを帯びた赤いポスト。
冬の冷たい空気の中でも、その赤だけは不思議と温かく見えたものだ。
昭和三十五年、はがき一枚が五円だった時代。
五円玉を指先で確かめながら、文房具屋で切手を買った記憶が、今も心の底に残っている。
手紙を書くという行為は、今よりずっと重みがあった。
鉛筆で下書きをし、万年筆やボールペンで清書し、書き直しがきかない緊張感の中で、一文字一文字に気持ちを込めていった。
誤字があれば最初からやり直し、それでも相手にどう思われるかを考えながら、慎重に言葉を選んだものだ。
ポストに投函するときは、ほんの一瞬、立ち止まる。
「ちゃんと伝わるだろうか」
そんな思いが胸をよぎり、赤い鉄の口に吸い込まれていくはがきを、名残惜しそうに見送った。
今のようにすぐ返事が来るわけではないから、待つ時間もまた、大切な時間だったのだと思う。
あの頃の暮らしは不便だったかもしれない。
でも、不便さの中に、確かな温もりと、相手を思う心の深さがあった。
赤いポストを思い出すたび、私はその温もりを、そっと胸に抱き直すのである。
明るい気持ちになる言葉:
ゆっくりでも、心を込めれば想いはきちんと届く。

