
今、あの時代を振り返ると、不思議と苦労よりも温かさが先に浮かぶ。
両親が忙しく働いてくれたこと。
三人で肩を寄せ合ったこと。拭き掃除で床を光らせたこと。
そして、あのカレー。
じゃがいもが大きすぎて煮崩れしなかったことも、
粉が溶けきらずに少しダマになったことも、今ではすべて愛おしい。
昭和の台所は広くはなかった。
ガスの火は強く、換気も十分ではなかった。
それでも、あそこには家族の匂いがあった。
私はあの頃、知らず知らずのうちに“責任”を学んでいた。
そして同時に、“愛情”も。
今、もしもう一度あの台所に立てるなら、母に言いたい。
「母さん、あのカレー、ちゃんと受け継いでるよ。」
あの湯気は、消えていない。
心のどこかで、今も立ち上っている。
そして私は思う。
あの小さな台所こそが、私の原点だったのだと。
明るい気持ちになる言葉:
歳をとるって、お気に入りのエピソードを心に貯金していくこと。
