
家からたった5分のバス通り。
そこに並んでいた商店街は、今思い出しても不思議な力を持っている。
一歩踏み出すたびに、自分が少しだけ好きになれる。そんな場所だった。
大型スーパーもコンビニもないのに、いや、なかったからこそ、あそこには“人の気配”がぎゅっと詰まっていたんだと思う。
豆腐屋さんの前を通ると、湯気と一緒に大豆の甘い匂いが漂ってきて、「ああ、今日もちゃんと一日が回ってるな」と、子どもながらに思っていた気がする。
文房具屋のガラスケースに並んだ消しゴムやキラキラしたシール。
買う予定なんてないのに、見ているだけで胸が満たされていた。
今思えば、指先をくわえて眺めていたあの「片思いの時間」こそが、宝物だったのだ。
今の自分は、目的がないと動けないことが増えた気がする。
効率とか、意味とか、結果とか。だけどあの商店街は教えてくれる。
何もしていないようでいて、心は静かに、でも確かに呼吸を深めていた。
特別なことなんてない。
けれど、あの道を歩く自分を想像したら、少しだけ呼吸が深くなった。
明るい気持ちになる言葉:
「あせらない。心はもう、動き出している」

