
南風は昼になっても衰えず、家の周りの木々をざわざわと揺らしていた。
その音を聞きながら、ふと「風もまた巡っているのだな」と思った。
形を変え、季節を越え、同じ場所に戻ってくる。その在り方は、人の記憶に少し似ている。
四国遍路の旅も、終わってしまえば一つの思い出だ。
しかし、その思い出は決して過去に閉じ込められてはいない。
仏壇の前で手を合わせるたび、般若心経を唱えるたびに、あの道で感じた暑さや孤独、そして小さな達成感が、今の自分の中で息を吹き返す。
もしあの時、会社をたたむ決断をしていなければ、もし遍路に出ていなければ、今のこの静かな朝はなかったかもしれない。
そう考えると、人生は本当に不思議だ。
一つひとつの選択が、思いもよらぬ場所でつながっている。
今日一日は、特別な出来事があったわけではない。
それでも、心の中では過去と今が穏やかに重なり合い、確かな充足感があった。
こうした日を重ねていけること自体が、何よりの幸せなのだろう。
明日もまた、同じように朝を迎え、手を合わせる。
その繰り返しを大切にしながら、静かに歩いていきたい。
明るい気持ちになる言葉:
思い出は重荷ではなく、今を支える追い風になる。
